村上純子氏による書評
H・ノーマン・ライト著『悲しみを道連れに生きる25のヒント』
の書評がキリスト新聞ウェブ版に掲載されました。
大切な人を失う悲しみは、誰にとっても避けられない現実である。『悲しみを道連れに生きる25のヒント』(H・ノーマンライト著、前島常郎訳)は、悲嘆とは何か、悲嘆の中で人は何を経験し、どう抱きとめるのか、そして回復への道のりをどのように歩むのかを示す手引き書である。喪失の中で経験する痛みや混乱、怒りや恐れ、不安などは異常ではないと語り、悲しみを乗り越えるのではなく、抱きとめて「道連れ」にしながら歩むための具体的なヒントを示している。
著者は「悲しみと癒しの道は人それぞれ」であるとし、自分の喪失を他人と比べて矮小化しないようにと語る。「あの人の方が大変だから」と比較し、自らの悲しみを抑え込む必要はないという。また、「いつ目的地に着くのか?いつ回復は来るのか?」という問いに対し、「それは決まった地点に一度だけ降り立つのではなく、現在進行形である」と述べる。悲しみの道は直線ではなく、行きつ戻りつしながら続いていく。そしてそれは「以前と同じ」に戻ることではなく、新しい「普通」を自ら作り出す道である。
本書は何度も読み返す価値がある。悲しみの歩みの中で、自分がどの位置にいるかによって心に響く箇所は変わるだろう。必ずしも最初から順に読む必要はない。むしろ、ページをめくって心に留まった言葉こそ、そのときの自分に必要なメッセージであるのかもしれない。
悲しみは信仰生活にも深い影響を及ぼすが、そのただ中にあっても神の慰めと臨在は確かにある。悲しみを消し去ることはできない。しかし、本書はそれを抱えて道連れにしながらも歩み続ける勇気を与えてくれる。読者の心を支える力が込められた一冊である。
(カウンセリングオフィスお茶の水代表) 村上純子